高麗人参はどのように栽培されるの?

古くから希少な薬草として珍重されてきた高麗人参は、“万能薬”を意味する『Panax ginseng』という学名を持つように、人体に幅広い効果が期待できることで知られる多年生の植物です。
優れた薬効を持つ一方で、生育する力がとても弱く、栽培に適さない耕地ではまったく育たないというデメリットもあります。
そのためまずは栽培に適した土地を選び、かつ土壌づくりから始める必要があり、種まき前の土づくりには通常1~3年間、生育には4~6年間もの長い年月を要したのちに収穫するため、高麗人参の栽培は非常に難しいとされているのです。
この記事では、高麗人参の栽培はどんな方法でおこなわれるのかについてご紹介します。

高麗人参の栽培が難しい理由について

そもそも高麗人参が自生するのは、中国東北部や朝鮮半島の山岳地帯の、ごく一部の地域に限られています。
涼しく乾燥した気候を好む高麗人参は、高温多湿の地域では育たない性質の植物のため、年間の降水量が1200mmほどにとどまり、降雪量も比較的少ない地域でのみ生育するのが特徴です。
高麗人参の生育に適した土壌とは、水はけのよい火山灰質で、最適な水分の含有率は50~60%とされており、梅雨や積雪の時季でもこの水分量が保たれる必要があります。
高麗人参を人工栽培するには、それに適した気候や土壌などの条件が揃うのが大前提といえ、その環境を整える必要性から栽培が非常に難しくなっているのです。

栽培や休耕期間などにも長い時間を要するため

また、冒頭で触れたように、高麗人参の種まきから収穫までには長い時間を費やし、栽培中には害虫や雑草による被害を防ぐために、常にそれらの対策に追われるなど多くの手間や労力も必要となります。
さらに、収穫後の耕地で次の栽培をおこなうには、一定の間、土壌の改善だけをつづける休耕期間に当てなくてはなりません。
一度栽培がおこなわれた耕地は、高麗人参の成長のためにすべての養分が吸収し尽くされているので、数年~10年間は栽培できない土壌となってしまうのです。
かつては10年以上を要した休耕期間は、現在では土地の消毒や、次の栽培までの間を利用してほかの作物を育てる輪作をおこなうことにより短縮が可能になったとはいえ、数年は同じ土地で栽培できないのが現状です。
このように高麗人参の育成には長い年数を要することからも、栽培が非常に困難とされているのです。

高麗人参はどのような方法で栽培される?

土壌づくり

高麗人参の栽培には、なによりその生育に適した土壌づくりが重要とされています。
高麗人参は古くから『非燥・非陰・非陽』、つまり「暑すぎず寒すぎず、水はけのよい」土地が生育に最適とされており、この条件をクリアした耕地で栽培をおこなう必要があるのです。
高麗人参は病虫害に弱いため、種まき前の土づくりには1~3年ほどかけるのが通常です。
まず、青草などの有機質を数回に分けて混ぜ、45cmほどの深さまで年間10回以上耕します。
この作業が日中に丹念におこなわれることで土に日光を当てて消毒し、中に潜んでいる害虫や病原菌対策をしておくのです。
なお、紅参の原料に用いられる6年根など、上質な人参の生育には、土に混ぜる肥料に化学肥料や殺虫剤の使用は厳禁とされています。
そのため、産地では腐葉土や骨粉、鶏の糞などミネラル分の多いものが用いられたりするほか、あらかじめ肥料用にするトウモロコシなどを生育し、茎や葉ごとトラクターで鋤きこんでおくといった方法も採られています。

種まき・栽培

高麗人参の種まきがおこなわれるのは、日本では10~11月の晩秋ごろか、桜の開花に先駆けた3月ごろで、積雪の多く寒冷な朝鮮半島では秋に実施されるのが一般的となっています。
種まき後にはその上から3cmほどの土をかけ、さらにワラやビニールで覆いをします。
高麗人参は、もともと直射日光の届きにくい山岳地帯や森の奥深くに自生するため日の光に弱く、直に日光を当てないようにして栽培しなければなりません。
順調に生育すれば4月ごろには芽吹きを始める高麗人参は、特に夕日に弱いとされるので、日よけなどの設置をして西日が差し込まない工夫が不可欠となります。
一方で朝日には当たるほうが望ましいので、その時間帯だけ日よけを外し、頃合いを見て再び遮光するという作業を毎日くり返します。
さらに高麗人参は風にも弱いため、防風柵の設置も欠かせないなど、非常に神経を使う作業を要求されるのが栽培の特徴といえます。

収穫

種まきから1年ごとに1枚ずつ葉をつける高麗人参は、4年目以降の初夏に赤く小さな実をつけます。
また、栽培3年目を過ぎると有用成分であるジンセノサイドの含有量も増加し始めます。
一般に商品として市場に流通する高麗人参は、4~6年間栽培されたものが有用とされており、年数がそれに満たないものは有用成分の含有量が低いほか、7年以上育てても増えないので栽培自体おこなわれません。
そのため、育成に4~6年をかけた高麗人参の収穫は、通常9~10月ごろにおこなわれます。
病原菌や害虫に弱い高麗人参は、栽培中には多くの手間と労力を要してそれらの対策がおこなわれ、5~9年もの時間を費やして収穫に至るのです。