高麗人参には3つの種類がある

高麗人参は古来、日本を含めた東アジアで滋養強壮に優れた薬用植物として珍重され、現代でもサプリメントや健康食品などの原料として配合されています。
その種類は加工法によって大きく3つに分けられており、それぞれの持つ特徴や用途に違いがあるのです。
この記事では、加工によって違いが分かれる高麗人参の3つの種類についてご紹介します。

高麗人参の栽培について

そもそも高麗人参は、アジアの極東地方にのみ自生する多年生の植物で、高温多湿を嫌う性質があり栽培が難しいため、古くから高値で取引されてきました。
降水量は年間1200mmほどで降雪量も比較的少ない、乾燥した寒冷な気候の地域という、非常に限定された環境が栽培に最適とされています。
そのため、高麗人参の栽培に必要な条件というべきものには、最大で約2年をかけて準備した土壌と、栽培に適した気候条件とが挙げられます。
これらが揃ってはじめて高麗人参の種がまかれ、収穫までに実に4~6年もの年月をかける栽培がおこなわれるのです。
さらに、栽培中には日照や風通しに注意を払ったり、雑草を丁寧に除いたりする必要があるなど手間がかかるうえ、収穫後の畑は多くの栄養分を失っており、毎年同じ作物を同じ耕地で育てる連作ができないのが、栽培に関わる大きな特徴といえます。
土壌の持つ多くの養分を吸収して成長する高麗人参を再び栽培するには、それに適した状態に戻すための一定期間の年月を要するのです。

高麗人参は3種類に分けられる

上記のように種まきから収穫までに多くの労力や時間を要する高麗人参は、有用成分の観点から栽培に3年以上を費やしてのち、いわゆる本物に成長します。
高麗人参は産地や栽培年数により、等級が1年根から6年根に分けられていて、成長のピークを迎える6年根が最高品質とされています。
また、加工法によりさらに『水参(すいじん)』『白参(はくじん)』『紅参(こうじん)』の3種に分類され、以下でそれぞれの特徴などについてご紹介します。

水参とは?

水参とは栽培して1~2年ほどで収穫された生のままの高麗人参をいい、含まれる水分量が全体の80%近くを占めることから『生参』と呼ばれる場合もあります。
土の中から採取したばかりの水参は、非常に多くの水分を含んでいるために傷みやすく、そのままでは10日ほど経つと腐敗が始まってしまい、保存に適さないというデメリットがあります。
エキスにしたり乾燥させたりしてから用いられる場合もあるものの、冷暗所で保管する必要もあり保存性に欠けるため、薬膳鍋など調理用の材料に使われるのが多い種類です。

白参とは?

白参とは、4年根から5年根の水参の皮をむいて天日で乾燥させたものを指し、1年ほどの保存が利くのが特徴です。
表面の皮をむいているため、白っぽい色味からその名で呼ばれています。
水参の状態は傷みやすく保存に不向きというデメリットがあるので、後述する紅参と同様に、高麗人参は乾燥・加工して保存性を高めてから用いるのが一般的です。
とはいえ、高麗人参の有用成分であるジンセノサイドは表皮付近に多く含まれているので、それを取り除いた白参は、高麗人参としての作用や価値がほかの種類に劣るとされています。
その一方で乾燥加工されているため、約1年間と比較的長期の保存が利き、手頃な価格で購入できるというメリットもあります。
白参は主に生薬やお茶、サプリメントなどの原料に用いられるなど、加工の幅が広いのが特徴で、市場に流通している多くの高麗人参の製品に利用されている種類です。

紅参とは?

紅参とは、主に6年間育てた6年根の中からさらに厳選されたものだけが用いられ、皮をむかずに蒸気で蒸したあと、含まれる水分量が14%以下になるように乾燥処理が施された高麗人参です。
蒸し上げてから干す、という過程を踏むことで赤褐色に変化するためその名がつけられた紅参は、真空パックであれば10年間もの保存が可能とされるほど長持ちする特徴があります。
さらにその加工処理によって、有用成分やほかの栄養素が凝縮されるだけでなく、煎じたときに成分が溶け出しやすく、体内での吸収率も高まるというメリットもあるのです。
また、高麗人参の品質の優劣は、ジンセノサイドの含有量の多さで評価されるのも特徴といえます。
野菜や果実の有用成分は皮に多く含まれているのと同様に、高麗人参が含むジンセノサイドの量がより多いのは、表皮がそのままの状態で加工された紅参です。
もともとその有用成分が理想的な配合比率で含まれている6年根を使用した紅参は、前述の2つの種類に比べて、加工に要する時間と手間もかかる付加価値も加え、特に貴重な上級品として扱われているのです。

高麗人参の種類・まとめ

3つの種類が存在する高麗人参は、中国最古とされる薬学書の『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』において、長期にわたって飲みつづけても副作用のない、最高ランクの上品(じょうほん)の生薬として分類されています。
中でも栽培に6年間を要することに加え、収穫後に蒸して乾かすという加工を経てできあがる紅参は、古代から重宝されてきたほどの薬効に優れた希少な種類のため、健康の増進を目的とする場合の選択肢に推奨されているのです。