高麗人参とはどんなもの?

高麗人参とは古くから根の部分が希少な薬草として珍重された植物で、人体の健康や美容に高い効果が期待できます。
現在でも生薬として利用されるほか、煎じてお茶にしたりお酒に漬け込んだりする素材として、またはサプリメントやエキスなどの健康食品の原料にも用いられています。
種まきから収穫までに4~6年という時間を要する高麗人参は、その長い年月をかけて根に吸収した栄養素により、多様で有益な効果を発揮するのです。
この記事では、高麗人参の概要についてご紹介します。

高麗人参について

高麗人参とは、ウコギ科の多年生植物の根を乾燥させたもので、オタネニンジンという和名を持つほか、生薬名として朝鮮人参とも表記される場合があります。
生薬を国産化する政策が採られていた江戸幕府の八代将軍の時代に、李氏朝鮮時代の朝鮮半島から輸入した種を用い、国内の栽培を始めた経緯から朝鮮人参と呼ばれたり、将軍自らが各地の大名に種を与えたことから御種人参(オタネニンジン)と名づけられたりした歴史を持ちます。
高麗人参は東アジアの、特に中国東北部から朝鮮半島にかけ乾燥した寒冷地に自生しており、古来東洋では滋養強壮の漢方に用いられ、現在ではサプリメントなどの健康食品の原料に配合されています。

高麗人参の特徴とは?

高麗人参は、種まきから3年目以降の初夏に赤く小さな花と実をつけ、採種は4年目を過ぎてからおこなわれ、年単位で根を大きくしていく植物です。
花や実よりも、この肥大な根に有用成分が多く含まれており、その形が人体に似たものほど一般に高品質として扱われています。
ニンジンという名詞を用いて表現しているものの、高麗人参がウコギ科であるのに対し、野菜のニンジンはセリ科の植物のため、両者はまったく別の種です。
なお、漢字表記での人参とは「優れた薬効を持つ人体の形をした植物」を意味するとされています。
薬効の高さや困難な栽培方法などから、古くはもちろん現代でも高値で取引される貴重な生薬の一つに挙げられる植物なのです。

高麗人参に含まれる成分とは?

不老不死の妙薬とも呼ばれる場合がある高麗人参には、各種アミノ酸をはじめ、ビタミンB群やビタミンC、鉄や銅・亜鉛などのミネラル類、天然由来の有機化合物であるアルカロイドなどの栄養素が含まれています。
中でも、植物の根や葉・茎などの苦み成分であるサポニンが豊富に含まれており、高麗人参に特有のサポニン群を40種以上も含んでいるのが特徴です。
なお、高麗人参に特有のサポニンは『ジンセノサイド』と呼ばれており、多くの生理作用を備えているため、その効能の中心的な役割を担っている成分なのです。

高麗人参の持つ主な働きや効果とは?

高麗人参は学名を『Panax ginseng』といい、万能薬という意味を示すその言葉どおり、人体の健康や美容に多くの有益な効能をもたらします。
以下では、高麗人参の有用成分であるジンセノサイドによる主な働きや効果についてご紹介します。

血行を促す作用

まず、ジンセノサイドの代表的な効能には、優れた血行促進の作用が挙げられます。
ジンセノサイドには、血のかたまりである血栓を溶解する働きを持つ、タンパク質分解酵素のプラスミンを活性化する働きが備わっています。
プラスミンの作用を活発にすることで血液を固まりにくくし、血行を促しているのです。
また、ジンセノサイドは脂質の代謝を促す働きもあり、血液の粘度の上昇を抑えることでもスムーズな血液循環を支えています。
血行がよくなると、冷え性や腰痛・腰痛、むくみなどの症状をやわらげる効果が期待できます。

抗酸化作用

抗酸化作用とは、老化やあらゆる疾患の原因となる活性酸素を除去したり、体内でのその大量発生を防いだりする働きです。
活性酸素は本来、体内への病原菌の侵入を防ぐなどの重要な役割を担う物質ですが、体内で必要以上に発生すると、生体成分や正常な細胞までを損傷させてしまい、老化の助長やガンなどの発症の引き金となります。
高麗人参が含むジンセノサイドは、高い抗酸化作用を備えた成分で、生体成分を活性酸素による攻撃から守り、老化を遅らせたり動脈硬化を防いだりする効果が期待できます。

自律神経の整調作用

ジンセノサイドは神経の働きにも影響を及ぼし、その数ある種類のうちの『ジオール系』と『トリオール系』の働きにより、自律神経のバランスが整えられています。
ジオール系は神経の興奮を抑える作用を持ち、一方のトリオール系は神経を刺激する働きを持つというように、両者は相反する作用があるものの、いずれかが亢進するのを抑える機能をともに備えている関係性にあります。
つまり、興奮や緊張をもたらす交感神経に強く振れるとジオール系が作用してそれを抑え、リラックスをもたらす副交感神経が必要以上に優位になるとトリオール系が働き、一方に偏りすぎないようにバランスを保っているのです。
このようなジンセノサイドの働きによって、高麗人参には自律神経のバランスを整え、精神の安定や安眠、血圧の正常化や血行改善などの効果が期待できるのです。